貴金属売却にまつわる税金知識

近時、金相場高騰に伴い貴金属を売却されるお客様が多数いらっしゃいますが、同時に税金面に関しても疑問を持たれる方もいらっしゃいます。 そこで、「貴金属売却にまつわる税金知識」と題しまして貴金属売却の際に発生すると想定される税金のポイントをまとめました。

目次

所得区分

  • 譲渡所得:買取店などで1回ほどの売却を行った場合
  • 雑所得:継続して何度も売却を行っている場合
  • 事業所得:事業として行い、売却で利益を得て生活している場合

※一般的には譲渡所得があてはまります。以下、譲渡所得の計算方法です。

譲渡所得の計算

譲渡所得(不動産などの分離課税される譲渡所得を除く)
=売却額-(購入時の金額+購入と売却時の経費)-特別控除(50万円)

その年分の譲渡所得の対象となるすべての品目の合計額を計算し、売却額の合計額が購入価格の合計額を50万円以上超える場合は税金(所得税及び住民税)が発生する可能性があります。 つまり、売却額が新品購入時を超えるような高値にならない限り、税金は支払わなくて良いことになります。 金地金など資産の所有期間が5年超か以下かにより税金の計算方法が違ってきます。

所有期間の違いによる譲渡所得計算方法

<短期譲渡(所有期間が5年以内)>

総合短期譲渡所得として総合課税により給与・年金等の所得と合算して税額を計算

総合短期譲渡所得
=合計の売却価額-(取得費+手数料)-特別控除額50万円

例)3年前に100万円で購入した金を200万円で売却(=譲渡価額)
200万円-(100万円+0万円)-50万円=50万円

<長期譲渡(所有期間が5年超)>

総合長期譲渡所得として総合課税により給与・年金等の所得と合算して税額を計算

総合長期譲渡所得
={合計の売却価額-(取得費+手数料)-特別控除額50万円}X1/2

例)10年前に100万円で購入した金を200万円で売却(=譲渡価額)
{200万円-(100万円+0万円)-50万円}×1/2=25万円

※いずれも手数料がかからない重量の金を売買した場合。

取得費の算出方法

  1. 原則:他から購入した資産については、購入代金のほか購入手数料等の付随費用を加えた額を取得価額とします。
  2. 相続、贈与により取得した場合:相続や贈与(限定承認を除く)によって金地金を取得した場合には、先代の取得価額を引き継いで譲渡所得金額を計算します。
  3. 購入価額が不明な場合:親からの相続により金地金や金貨を相続したが領収書などの購入当時の書類が紛失して購入価額が不明の場合には、譲渡による「収入金額の5%」相当額が取得費とみなします。 購入価額が不明の場合は、譲渡所得の金額の計算上非常に不利になりますので、金地金や金貨を購入した場合には、領収書や買付け明細書などの書類を保存しておくことが大切です。

金購入時の計算書/領収書がない場合の具体例

例えば300万円で購入したインゴットを400万円で売った場合、売却時に費用がかかっていないと仮定して売却益は100万円となります。 しかし、300万円という購入金額が証明できないと、売却益は385万円とみなされてしまいます。

相続税

相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、相続税が課税されます。

Q:相続で地金をもらったのですが、税金はかかりますか?
A:地金・金貨・プラチナコインは資産となりますので、相続(贈与)が行われた場合は、相続税(贈与税)の対象となります。 被相続人から相続や遺贈によって財産を取得したすべての人の課税価格の合計額が、基礎控除額を超えるとき相続税がかかります。 価格の合計額が、基礎控除額以下の場合は、相続税の申告は不要です。

Q:相続の場合、評価額はどの時点の価格で決まりますか?
A:相続開始日(=原則として被相続人の死亡日)の時価が評価額となります。

Q:贈与の場合、評価額はどの時点の価格で決まりますか?
A:贈与成立日の時価が評価額となります。

Q:相続、贈与で得た地金を売却した時の税金の計算はどうなりますか?
A:相続・贈与で取得した地金・金貨・プラチナコインをご売却した場合、被相続人が取得した時の価格を取得費として引き継いで譲渡所得を計算します。 また、財産を受けた人が相続・贈与が発生する以前の所有者(被相続人)の所有期間を引き継いで、短期又は長期の判定を行います。

贈与税

贈与税は年間110万円(金・地金その他の財産を含めた合計額)の基礎控除額以下の贈与についてはかかりません。 ただし贈与を受ける場合には贈与をする方と贈与契約書を結ぶ必要があります。 なお、贈与の場合、贈与税における金の評価額は贈与成立日の時価(買取価格)となり贈与契約書に記載する必要があります。

※贈与契約書がないと贈与と認められない場合があります。また、贈与契約書なしで贈与し続けると一括贈与とみなされてしまう可能性もあります。

支払調書

お客様への支払金額が200万円を超えた場合、事業者はお客様の「個人番号(マイナンバー)」の提示を求めなければなりません。

Q:なぜ事業者は個人番号(マイナンバー)の提示を求めるのですか?
A:平成23年の所得税法改正に伴い支払調書制度が導入されました。 お客様への支払金額(買取手数料などを差し引く前の金額)が200万円を超えた場合には、事業者は、お客様の「住所」、「氏名」、「個人番号(マイナンバー」(2016年1月以降)と取引内容を記載した「支払調書」を税務署に提出することが義務づけられました。

※「支払調書」提出の対象となるのは、金地金、プラチナ地金、金貨、プラチナコインおよび、純金積立、プラチナ積立です。銀地金、パラジウム地金や貴金属ジュエリーなどの売却は対象外です。

※例えば金インゴットの売却益が199万円であった場合であっても、売却者の確定申告は必要となり、申告を怠ると申告漏れによる追徴課税が課せられる可能性があるため注意が必要です。 ちなみに、宝石・貴金属等を取り扱う古物商は、犯罪収益移転防止法(マネーロンダリング防止法)の貴金属等取引業者に該当するため、200万を超える現金取引を行う場合に限り、本人確認及び取引記録の保存期間が7年間となります。(通常は3年間)

まとめ

上記の通りインゴットの売却額が200万円を超えるかどうかにより、税務署に提出する資料が変動します。詳しくはご自身の居住地を管轄する税務署または税理士にお尋ねください。

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