財産を子供や孫にできるだけ残してあげたい、と思う方も多いと思います。しかし財産の相続には相続税が付きものです。財産を残しつつも、相続税は最小限に抑えたい、という方に有効なのが生前贈与です。相続税を節約し、少しでも多くの財産を相続できるようにするテクニックについてご紹介していきたいと思います。
相続財産が相続税の基礎控除額を超えているなら生前贈与が効果的!
相続財産が非課税枠である相続税の基礎控除額を超えている場合は、生前贈与をすることで相続税の節税ができます。
つまり相続財産が基礎控除額を下回ってしまう場合は生前贈与をしても節税効果はありません。
相続税の基礎控除額は以下の計算式で求められます。
3,000万円+(法定相続人の数)×600万円=相続税の基礎控除額
この計算の結果、相続財産の方が相続税の基礎控除額を超える場合は節税対策として生前贈与をすることが効果的です。
さらに次の2つのケースのどちらかを目的として生前対策をすることでより効果的になります。
①相続税の額が多いため、生前贈与をすることで相続税を減額する
(A)対象となる財産総額が減ると相続税が下がる
(B)対象となる財産総額を計画的に減らして税率を下げる
②相続税の額が少ないため、相続税を0円にするために生前贈与をする
相続税対策になる生前贈与の方法5つ
生前贈与をすることによって、相続税の節税ができることがお分かりいただけたかと思いますが、相続税を非課税にするためには以下の5つの方法で行わなければなりません。
①毎年110万円までの暦年贈与
財産をもらう1人あたりの金額が110万円以下であれば非課税となります。この場合人数に限りはないので、何年間かかけて複数人に110万円ずつ贈与することでかなりの節税になります。
※小さな子供に対する暦年贈与には贈与契約書が必要になります。
※相続したい金額が多額の場合、110万円を数年に分けて暦年贈与しても一括贈与ができたことを疑われる場合があります。その対策として、あえて110万円より少し多い額を贈与し、少しの贈与税を払うことで贈与の実績を作ることができます。
※贈与する側が亡くなってしまうと、相続開始前3年以内の贈与分には相続税が課税されてしまいます。暦年贈与をお考えの方は、元気な間の早い段階から贈与を始めることをおすすめします。
②生前に非課税枠を2,500万円分作る
相続時に清算される制度として相続時精算課税というものがあります。
生前に贈与された財産を相続税の計算の際に含むことで、2,500万円までを非課税で贈与することができます。
これには条件があり、贈与側は60歳以上で、その子供や孫である20歳以上の人物への贈与となっています。
③教育資金としての相続なら1,500万円まで非課税
子供や孫の教育資金として一括贈与する場合は、贈与を受ける側の1人につき1,500万円まで非課税となります。これは自由に利用できるお金を生前に贈与する場合で最大の非課税枠となりますが、一方で贈与された側が30歳になるまでに教育資金として使い切らなければならず、もしもお金が残っていた場合はその額に対して贈与税が発生するという仕組みがあります。
④住宅購入資金の贈与は1,200万円まで非課税
子供が住宅を購入する際、資金援助をする方も多いかと思いますが、この場合最大1,200万円までが非課税となります。さらに夫婦共同で住宅を購入する場合、夫と妻それぞれの親からの贈与が非課税となるため、それぞれの親から資金の贈与を受ける場合、合計2,400万円まで非課税になるというメリットがあります。
これは資金を贈与する場合のみに適用され、自宅などの不動産そのものを贈与する際には適用されません。
⑤夫婦間での贈与は、不動産に関わる資金は2,000万円まで非課税
20年以上の婚姻期間がある夫婦で、夫婦間による居住用不動産や居住用不動産の購入資金を贈与する場合は2,000万円までが非課税となります。これは暦年贈与の基礎控除額である110万円とは別に適用されるため、これと組み合わせることにより最大2,110万円までが非課税になります。さらに相続開始3年以内の贈与であっても、相続財産に加算されることはありません。
夫婦の婚姻期間が20年以上であること以外の条件としては
※自分が居住するための不動産の購入資金であること
※翌年の3月15日までに、該当する居住用不動産に住んでおり、それ以降も住み続ける見通しであること
※贈与税の額は0円であるが、登記費用や不動産取得税はかかります
まとめ
節税対策のための生前贈与は、知らなければ損をしてしまうこともあり、目的やタイミングをきちんと把握しておかなければなりません。年齢的にも早めの段階から贈与を検討し、準備しておくことでより節税にも繋がります。相続財産が多い場合は、目安として60代に入ったら子供や孫に生前贈与し始めていくことを考えておきましょう。相続問題については難しいことも多いため、トラブルを起こさないためにも相続問題に詳しい税理士や弁護士に相談し適切なタイミングで生前贈与を行いましょう。